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笠取にある道

クルマと暮らす

「衣食足りて礼節を知る」という言葉があります。

これは、自力で食うことと寝るところの準備ができてはじめて、それ以上のことに手を伸ばすことができるのだ、ということをも言っているのだと思います。

70年代後期に幼稚園の門をくぐってから90年代後期に社会人の門をくぐるまでの長い間、学生というモラトリアムの立場で親に多くを依存した生活をおくってきた私めも、1998年4月に人並みに働きはじめて以来、食うことと寝ることに関してはその費用を支払えるようになり、ここでようやく「辛うじて最低限の準備ができた」ということができるようになりました。無論、自活しているなどと大きく言える状況ではありませんが。

ともかく、こうなると、「それ以上のこと」に手を伸ばしたくなります。

それ以上のものとは、何ぞや。

ところで、男一世一代の買い物として挙げられるものは、やはり「家」と「クルマ」だと思います。どちらも、フツーのサラリ〜マンにとっては、おいそれと買いまくることはできない代物です(クルマに関しては、低年式の中古などであれば買いまくれないこともないですが)。しかも、所有するだけでも多くの責任が課せられる、数少ない品物です。所有することで公的な責任が必要となる物を所有すること・・・この低くないハードルを無事に越えてこそ、男として一人前になれるというものです。

・・・と、なんか話がおかしな具合いになってきたので、前置きはこの辺にして。

結局。

家とクルマの間の価格比は恐ろしく高いので、クルマを買うことにしました・・・

いやいや。そんなネガティブな理由じゃなくて。
何年も前から、ずっと欲しかったのです。クルマが。

クルマとは、個人における機械いじりの頂点に立つ存在であり、これを所有し、自由気侭にいじることは子供の頃からの憧れでありました。ぴかぴか光るクロムメッキのラチェットがずらっと並んだ工具箱。どれだけ洗っても手に残る、油脂類の機械臭くも心地好い薫り。普段は静かながら、いざとなると手に負えないほどの力と咆哮を発する、醜くも美しく頼もしいエンジン。どれもが、心のなかに未だ僅かに生き残る童心をくすぐります。

それに、クルマは家と違って動く財産なので、風を好むモバイル野郎のライフスタイルにはぴったりです。仕事で8時間以上も同じ椅子に座って同じ格好で同じ画面を見続けなければならないことからくるストレスの解消には、クルマはピッタリの道具です。窓を全開にして川沿いの道を走ったときに浴びる風の、気持の良いことと言えば・・・!

・・・そんなこんなのこじつけ的理由と、資金的な側面から見た理由により、1998年の秋頃より、私は一気にクルマ購入への道を歩み始めたのです。

クルマを選ぶ

さて、こうして長年の夢と欲望を叶えるため、クルマを買おうと決意した私ですが

”では、なにを買うの?”

というところで、少し考え込んでしまいました。 PC に関しては、本体から周辺機器から消耗品まで、色々と買い込んできた経験があります。だから、何を買う?という選択肢が与えられたら、正しい目的や立場などを分析し、まず間違いなく自分にもっともフィットしたものを一発で買える自信があります。もし合わないものを買ったとしても、それなりに自分に合うように作り替えることができる自信も実績もあります。しかし、こと車に関しては、まったくそういう勘がないわけです・・・!

ま、そりゃそうですやね。今まで、一台も買ったことがないものなのですから。

そこで、少し冷静になって、現況を分析することにしました。
結果は、以上のような感じになりました。
さて、これらの条件で絞った結果として得られる選択肢・・・
ここで、ふっと気づきました。選択肢に、日本の誇る(?)独自のカテゴリー、軽自動車の多いこと多いこと・・・!


K、自動車?

軽=オバチャン車・・・?

ここで私は、考えることになりました。軽自動車と言えば、維持費はバツグンに安い・・・。あたりまえだけど小さいクルマだし、電子装備は普通車と比べて貧弱な(失礼)ほうだし、衝突安全性なんてこれっぽっちもないし(失礼)。ヘンテコな車が多いし。国産だし。あとは、よく走り、よく曲がり、よく止まれば、カンペキだなぁ・・・

しかし、恥ずかしながら軽自動車というものに対する偏見は根強く、またターボなクルマに乗ったことがないということもあり、「いくらターボ付けたって所詮は 660cc なんだから、走らないし、止まらないんじゃないのかなぁ」という先入観が、そのころの私を強く支配していました。同時期、私の父親は L200 系の NAなミラに乗っていたのですが、「デザインとかは気に入ってるんやけどなぁ。軽は走らんぞ。加速力は全然ないしなぁ。普通車(STARLET)に乗り慣れたお前が乗ったら、ストレス溜りまくるやろうな」と、私に向かっていつもぼやいていたことが、私の心のなかの思考の根本にびっちりと巣食っていました。いや、偏見でもなんでもなく、確かに NA な L200 ミラは全然走りませんでしたが。また、昔、母親がスズキの NA の軽に乗っていたのですが、幹線道路の車線変更で非常に苦労していた(右折したいと思っても、右側の車線に入れない・・・!)ということをこれまた延々と聞かされていたということもあり、そんなこんなで、軽=走らない、という先入観は強烈に増幅されていたのでした。

L500 AVANZATO-R との出会い

そんな頃、私の誤った認識を根底から覆してくれるような、衝撃的な出来事が起りました。

先ほどの話に出てきた我が父親、年齢はすでに 60 歳に達しようとしている人物です。普通、男も 60 歳ともなれば、「クラウン」「MARK-II」「カリーナED」あたりの、無難な白いセダンを購入するものだと思います。しかし、私の父親はいったいなにを血迷ったのか、「L500 AVANZATO-R」を選択しました・・・。そう、それは忘れもしないある日曜日。父は、無造作に私を連れてダイハツのディーラに向かい、そこで販売されていた L500 AVANZATO-R の中古車の前に立ち、店の人がよってくるや否や、食い付くように話し込み、店員の薦めのままに、いきなり試乗を始めてしまったのです。息子の世代が乗るようなスポーツモデルの車に、息子を連れて運転席に乗り込む父親。冷静に考えてみれば、それはいささか異様な光景だったかもしれません。または、私が車を買ってもらう光景のように見えたかも知れません。

そのようなとんでもない経緯を経て、ここで私ははじめて、軽自動車のスポーツモデルというものに乗せてもらうことになったのです。

一足速く運転席に乗り込んだ父親に遅れまいと、私も急いで助手席にすべりこみます。座った瞬間、オヤッと思いました。そう、シートが、NA のものよりも遥かにホールド性の高いものになっていたのです。シートが与えてくれる何とも言えない車との一体感に、一瞬、面くらいました。こ、これが、これが軽自動車の、スポーツカーのシートなのか・・・!?なんという、強烈な人機一体感なのだ!?(ちょっと大げさ)。

そんなちょっとしたことに意表を取られた私を尻目に、車は、走り出します。・・・そう。ここでもまた予想外の出来事が。クルマは、ガツンと走り出したのです。おおっ!?!? のったりした出足を予想していた私は、思いっ切り面くらいました。出足が素早いのです。1.5〜1.6リッターぐらいの車の出足と同等と言ったら言い過ぎ・・・でもありません。本当に素早い。軽いボディーは、圧倒的なパワーでぐいぐい引っ張られます。NA とはいえ、ボディー重量と比べて決して低くない出力、100ps を誇る 4E-FE を擁した EP82 STARLET も裸足で逃げ出しそうな加速感です。

「なんてこった!これが 660 ターボの力なのか!」

この時、私は、自分の認識が間違っていたことを確認し、また多大なる興奮と興味を覚えました。軽自動車=K-Car って凄いんだ、これは、私が求めていたクルマの1つの姿なんだ、と・・・

その後しばらくして京都市西端にある桂坂に到着(あまりの興奮感に、途中経緯を忘れてしまいました)。ここで、運転手を交代してもらいました。初めて収まる、Kターボのコクピット。大型車と違ってペラペラな感覚がありますが、それがまた良いのです。って、こんなところでウットリしていても始まりません。シートベルトを装着して、後方の安全を確認したのち、アクセルを踏む・・・

ヒョー!(←声にならない歓喜の様子)

それから後しばらくの私は、横に父親が乗っていることもすっかり忘れ、この小さくも頼もしい 660 の白馬を自在に操る(もちろん、ドラテクなどはありませんので大人しいものですが)感覚を楽しんだのでした。

K、自動車。

すべての心配が杞憂と化した今、もはや悩む要素はなくなりました。私の興味は「Kのターボなクルマを買うのだ!」という一点に絞られました。でも、Kのターボと言ってもいろいろあります。つまるところ、
の4車種があります(他にもいいクルマがありますか?でも、私のわがままな選考を無事くぐり抜け、最終的に残った候補はこれだけだったのです)。さて、この中のどれにしようか、でもあれだな、父親が AVANZATOを買ったから(そう、結局勢いに乗って、AVANZATO-R を買っちゃったのです。わが父親。本気で尊敬しましたね。)自分はこれを買うことはできないな・・・などと取り留めもなく考えながら、父親の持っていた「軽自動車のすべて」とかいうムック本をパラパラと眺めていました。・・・そうしたら、そこに載っていたのが、

SUZUKI カプチーノ。

他のクルマとは一線を画したクルマである、という説明が延々と並んでいます。たしかに、スタイリングからコンセプトからメカニズムまで、なにからなにまで他のクルマと違いすぎる。ダメ押しとして「ハードトップにもなる2シーターオープンカー」。・・・こりゃあすごいなぁ。なんちゅうギミックだ。とんでもないクルマだぁ。そういえば、某 NewType という雑誌での某コラムで、カプチ乗りの日生かおるさんという方がカプチーノに関する話をよく書いておられたなぁ・・・。そういえば随分前、近所の板金屋に、緑色のカプチーノが 110万円ぐらいの値札をつけられて売られていたなぁ・・・。ありとあらゆる、取り留めのない思考が頭の中にどんどんと渦巻き、私の物欲ゲージはどんどん上昇していきました。

そこにダメ押しをしてくれたのが、インターネット上で活躍なさっている、カプチオーナーの方々のすばらしいページ。仕事中(おい)、何気なく infoseek で「カプチーノ」とキーワードを入れて検索したら出てきたのが、Fukami さんが運営されている「Cappuccino PRESS」。カプチーノに関する情報から、いじり方、ユーザーの方々の集まっている CGI-BBS。そこには、カプチオーナーが作られる、すばらしい世界が展開されていました。・・・もう居ても立っても居られない。勢いづいて、掲示板に「カプチの購入を考えています・・・アドバイスをください」という旨の書き込みをしたらば、あっというまに親切な方からの返事がついてしまったではないですか。ここでもまた私の興奮は極限に達し(←簡単に興奮する奴やね)、「よし!こうなったらもう、絶対にカプチを買うんだ!」という固い意思が形成されたのです。